乃木大将の短歌

 FBで紹介した掛け軸の説明を。

書いたのは伊豆凡夫(つねお)陸軍少将。中佐時代、乃木大将を補佐して二〇三高地で戦った軍人です。書家としても名高く、多くの墨跡が残っています。

根も幹も枝も残らず朽ち果てし

    楠の薫りの高くもあるかな

 大将が尊敬する大楠公を木になぞらえて詠んだ歌だそうですが、坐禅をしている立場から見ると、なにか公案のようでもあります。

「根を抜かれ、幹を伐られ、枝も折られて微塵に朽ち果てた後、楠はどこにある? さあ言え!」と臨済和尚にに胸ぐらを掴まれた気持になりました。面白いものです。

 乃木大将は禅にも造詣が深く、かの南天棒中原鄧州老師にも参禅したと聞いています。南天棒といえば、数々の豪快なエピソードで知られた老師ですから、その教えを受けた乃木大将の言葉に鋭い禅機を感じたとしても、「宜なるかな」ではないでしょうか。       (霊峰)